アコーディオンについて


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アコーディナにとても近い楽器、アコーディオン。

アコーディナはボタンアコーディオンの落とし子のようです。そこでアコーディオンについても解説していきたいと思います。

3つのアコーディオンを使っています。独特のキャラクターで、それぞれが音楽表現には欠かせない存在です。フリーベース・アコーディオン、スタンダードベース・アコーディオン、そしてアンティーク・アコーディオンです。

それぞれのキャラクターを解説していきます。

フリーベース・アコーディオン


最も使用頻度の高いアコーディオンです。基本的にアコーディオン・ソロの演奏ではこのアコーディオンを使います。通常のアコーディオンとの大きな違いは、フリーベースシステムというメカニカルな部分です。

フリーベースとは

アコーディオンという名前は元々和音という意味のドイツ語、「akkord」からきています。左手側はボタンひとつで和音を出せます。最近のデスクトップミュージックの環境などでも、ワンフィンガーでコードを出せる設定があります。

これを百年前に生楽器で実現したのがアコーディオンなのです。

しかし人間というのはわがままなもので、せっかくの便利な機能に不満を感じて、ボタンひとつで和音しか出なくてちょっと...と思うような人が出てきます。

じゃ!ということで、左手側もひとつひとつの音を「単音」でばらばらに出せるようにしたのが、「フリーベース」ということになります。通常のワンフィンガーで和音の状態をスイッチで切り替えて、すべてのボタンを単音で出せるようにするシステムです。

楽器としてよりもメカとしての構造が複雑になるために、一般的には高価なアコーディオンということになります。しかし、高価なものを持ったからといって、素晴らしい音楽を奏でられるかどうかは別問題です。

とりもなおさずこの楽器を使うのは、ボク自身の表現スタイルに「フリーベース」というものがかかせないということ。それとは別の部分でこの楽器にこだわる理由があります。

貴重なアコーディオン

美しい、美しくないは個人的な見解で絶対的に正しいというものは存在しません。あえてそういったことを踏まえて申し上げますが、このアコーディオンは数あるアコーディオンの中でも最も美しい響きを奏でます。

ボクは元々鍵盤タイプのアコーディオンを演奏してましたが、このアコーディオンを演奏したいためにボタンタイプに転向しました。

このアコーディオンはHOHNER社のMORINOという機種なります。

スエーデンのアコーディオン奏者であり研究家でもある、ラース・ホルム氏によると、この機種は1940年代頃に作られたMORINOのフリーベースのプロトタイプ。コンバーター式で5列フリーベースを同社は製造販売していない。この時代のMORINOのコンバータ式のフリーベースのプロトタイプで現存するのは、このアコーディオンを含めて2台。さらに演奏できる状態のものはこれしかないということでした。

この楽器は、世界に1台しかない!ということになります。

また世界的に有名なアコーディオン奏者、リシャール・ガリアーノ氏にお会いした際に、ガリアーノ氏の奥様が「特別な美しい音色のアコーディオン」と絶賛されました。

楽器と歩む歳月

このアコーディオンをもともと所有していたのは、アコーディオンのコレクターでもある有名芸能人のお父さんでした。この方が亡くなるときの遺言で、「これを演奏できる若い演奏家の人に譲りたい」と言われたそうです。

そして、当時まだ若かったボクが譲り受けることになりました。

ただ楽器としては修復しないとまともに演奏できないところだらけで、細かいところも含めて10年程の期間をかけて、アコーディオン技術者の安田翁にほぼ無償で修理していただきました。安田氏自身が、元の持ち主からこのアコーディオンをボクに譲り渡してくれた仲介者だったのです。

この楽器の内部には制作者MORINOのサインが入ってます。そして、ほぼ修理が完了したときに蛇腹の裏側に安田翁にサインしていただきました。

いろんな人の手を経て時を歩み続けたアコーディオン、これからも音楽と共に歩み続けていきたいです。

スタンダード・アコーディオン


WEBで偶然、MORINOと同じデザインのアコーディオンを見つけたのが、このアコーディオンとの出会いです。見た目の丸みを帯びたデザインは同じですが、音のキャラは全く違います。とても華やかな音でひとつひとつ音が鮮やかに歌ってくれます。それまであまり使用しなかったスタンダードベースがとても新鮮で、アコーディオンでしか表現できない世界があることに気づかせてくれました。

スタンダードベースについて

スタンダードベースとは前述した、左手側のボタンが「ワンフィンガー」で和音の出せる状態のアコーディオンのことをいいます。

ボタンは低域のルート(根音)1オクターブを単音で弾ける部分と、ワンフィンガーでコード(和音)が弾ける部分とに別れています。コードの部分はメジャー、マイナー、セブンス、そしてディミニッシュと並んでいます。さらにオーギュメント・ボタンまでついているものもあります(フリーベースのMORINOはスタンダードベースに切り替えると、オーギュメントのボタンがあります)。

赤い枠の部分がコード(和音)ボタン、それ以外がベース(単音)ボタンです。

アコーディオンの学習を始めたばかりの人が勘違いすることがあります。それはスタンダードベースは初心者、フリーベースは上級者というものです。確かにスタンダードベースは初心者にも簡単に扱えますが、実は奥が深く音楽的な和声理論などに詳しくないと充分に活用できません。

ディミニッシュコードがない?

スタンダードベースのボタン配列でディミニッシュのコードのボタンがないものあります。これはディミニッシュがないのではなく、別の押さえ方をすることになる、別の仕様ということです。主にフランス製のアコーディオンに多い仕様です。

ディミニッシュの和音は減7和音ともいわれますが、2種類のトライトーン(増四度の音程)が含まれています。増4度の音程はセブンスコードにも含まれています。たとえばGディミニッシュだとEb7とC7に含まれる増4度の音程で構成されています。

通常のベースを使用

ディミニッシュコードのボタンのないアコーディオンは、G単音ベースボタンとEb7のボタンを押します。このとき同時にC7のボタンも自動的に追従します。2つのボタンしか押していないのに3つのボタンが作動します。

このタイプはディミニッシュコードがないのではなくて、押さえ方が違うのです。

ちなみにGディミニッシュを作るときにEb7のボタンではなくて、同じトライトーン含むA7を押してもC7は発動しません。

カウンターベースを使用

カウンターベースとは、通常ベースボタンの下の列にあるもうベースボタンです。

たとえばEdim7を作りたいときには、Cの下のカウンターベースEを使って、Bb7のコードボタンを押します、するとC7のコードボタンが自動的に発動されて完全なディミニッシュコードになります。手の小さい人はこちらの方が便利です。

また、3列のベースボタンがある場合も同じようにセブンス・ボタンとベース・ボタンの組み合わせで、ディミニッシュコードを作ることが出来ます。

ディミニッシュコードは和声の特質上、コードの間のつなぎ目を縫うように半音進行で現れるパッシングコードです。半音進行が作りやすいカウンターベースでディミニッシュコードを作ることは、非常に理にかなっているのです。

ディミニッシュボタンがないメリット

メカの構造は少々複雑になってしまうのですが、以下2点のメリットがあります。

1.まず一つ目にディミニッシュのボタンを無くしたスペースが節約できます。ボディを小さくしたりもしくは、和音ボタンがなくなった分をベースの方に割り振ったりもできます。ベースボタンが増えることでより容易にベースラインを演奏することが出来ます。

赤い枠の部分が和音。和音の領域、ひとつ無くなった分をベースの領域に使えます。

2,もう一つのメリットは、簡単にテンションコードを作れることです。

ディミニッシュコードを押さえるときにふたつのセブンスコードが作動します(Fディミニッシュの時にはDb7、Bb7)。そのためにこのタイプのアコーディオンのセブンスコードボタンの構成はトライトーン(増4度)のみのシンプルなものとなっています。そのため各ボタンを混ぜ合わせて、簡単にオルタード系テンションを含んだコード等を作ることができます。

もちろん通常のアコーディオンでもボタン構成を駆使して複雑な和音を作れますが、ここではベーシックなテンションコードを簡単に作れるというメリットがあります。

また、通常のアコーディオンだと濁ってしまうようなものでも、和音構成がシンプルなので濁ることが少ないのが特徴です。

:例
Gベースボタン+Bb7=G7(b9)

またオーギュメントのコードも作れます。

Gベースボタン+F7+Dm(自動で発動)=G7(b13♮9)

GベースボタンとF7の和音ボタンを押さえるとDmが自動的に発動して、G7(b13♮9)になります。前述した、オーギュメント(V+7)のコードが作れることになります。

このタイプのアコーディオンは、ディミニッシュとオーギュメントのコードを基本的に実装していることになります。

このアコーディオンと後述するアンティーク・アコーディオンの左側ボタンは、このフランス配列になります。フリーベースのMORINOは通常のスタンダードベースです。

フランス式と通常のアコーディオン、それぞれのスタンダードベースの組み合わせによるハーモニーの作り方は、また別の機会に詳しく解説したいと思っています。

アコーディオンに内蔵マイク

さて、話をこのアコーディオンに戻します。

このアコーディオンはMORINOと同じHOHNER社製でARTISTE IISです。ARISTEシリーズはたくさん製造されており、Ebeyでも見かけることがあります。IISの特徴がスタンダードベースがディミニッシュボタンがないタイプです。ドイツ製のアコーディオンとしては珍しい「フランス仕様」となります。

このアコーディオンには内蔵マイクが設置されています。あのクジラで有名なマイクMD421を作っているゼンハイザー製です。これは後から装着したものです。もちろん、クジラ(MD421)が入っているわけではありません

アコーディオン内部に密閉設置しているために、ちょっとこもった音になります。ライブなどでは重宝するのではないかと思いつつ(そのために装着したものの...)、結局、実際に使ったことはありません。ここのところ、もう過激な音はソフトウェア音源やシンセを使った方が面白いと割り切っていたので、このアコーディオンにマイク内蔵して、それを何かに使うといういう目的すら忘れかけていました。

ところが、この記事を書くために昔実験で録音したデータをあらためて聴いてみると、

工夫次第で結構いろいろ使えそうな予感。

ということで、これに関しては今後活用してみたいと思っています。

アンティーク・アコーディオン


なんとも可愛らしいデザインのアコーディオンです。デザインが可愛らしいのでずっと部屋のオブジェでしたが、最近、好んで弾いてみる機会の多いアコーディオンです。1920年代に生まれたこのアコーディオンはもうすぐ100歳になります。

廃棄品を修復

Tokyoベイアコの原田さんから譲っていただいたアコーディオンですが、ほぼ廃棄品のようなものだったので格安で分けていただきました。それをフリーベース・アコーディオンMORINOを直していただいた、安田翁に修復をお願いしました。

ボタンはでこぼこ状態に並んでるし、内部メカのも機能しない。安田氏が悲鳴を上げるほど、とんでもない状態だったのですが見事修復していただきました。格安で分けていただいたのものなのですが、修復にかなりお金がかかってしまいました。

しかし、お金をかけて修復するだけの価値は充分にあるアコーディオンです。

懐の深い音

このアコーディオンは、Vercelliというイタリアのアコーディオンメーカーが1920年代に製造したものです。イタリア製ですがボタン配列や仕様はフランスを意識しているようです。

リードはブラス製なのですが、そのリードをマウントする台座がすべて真鍮製です。なので、ものすごく重量があります。音が深くてどっしりしているのはそのおかげと思います。

このアコーディオンを目にするとついつい奏でてしまいます。優しく懐の深い音がするからです。その音に包まれていたい、ずっと語り合いたいという気分にさせてくれるのです。

ものすごく感じのイイおじいちゃんとゆったりとした時間を過ごしているような、そんな気分にさせてくれるのです。

アコーディオン、101歳になりました!

 

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付録ー調声に最適なヘッドフォン!


付録として、エムフリお気に入りのお薦めグッズをここに掲載します!

今回は調整作業に使っている、ヘッドフォンです。


僕は基本的にヘッドフォンで音楽を聴くのは好きではなくて、アナログ録音時のモニターか雑音などの最終チェックにしか使いません。

その理由は再生音がヘッドフォンによる特性にかなり左右されるからです。なので制作時にはその目的に応じた音のヘッドフォンを選択することになります。録音時のモニターや雑音を検知するのに適したものを選びます。

ただ、ヘッドフォンはそれほど好きではないのです。空間を介さない直接耳に伝える音なので、どちらかというと好んで使うというよりも、作業工程で仕方なく使うことが多いです。

購入までの経緯

最近、SynthesizerVで調声をするようになって、MacBookPROを使用して外出先などでも作業するようになりました。そうするとヘッドフォンは必須となってきます。長時間装着して疲れなければ、まぁイイかくらいで適当に選んでいました。

当初はデザイン性からTeenage Engineering のヘッドフォンを使用していました。オシャレな感じと携帯に便利なので使っていました。ハイがカットされて中低位域がモッコリするので、ちょっとしたMix用にも使えそうなの感じでした。しかし、カバンに入れて持ち歩いていると可動部分が折れてしまいました。

気に入っていたので(デザインが〜笑)再注文して、ついでにいろいろ検索していると「アシダボックス」なるものを見つけました。ものすごく評判が良くて一時期は入手困難な状態が続いていました。日本のメーカーでデザインがなんともレトロ。

Teenage Engineeringのヘッドフォンよりも安かったのでポチってみました。

調声に最適

結論からいいますと、めっちゃイイです。特にSynthesizerVの調声作業にバッチリです!

丁度、人の声の部分が聞きやすくて微細な変化もこのヘッドフォンだと聞き逃すことがないです。SynthesizerVで調声をされている方には、是非是非お薦めのヘッドフォンです。コスパも良いです。

同じデザインで、ST-90-05ST-90-07というのがあります。僕が購入したのはST-90-07のほうです。評判になっていたのはST-90-05のほうなのですが、さらにパーツのグレードを上げて音をよくしたのががST-90-07です。

低域はあんまり出ませんので、そういった需要の音楽には不向きです。声が聴き取りやすいので、調声とは抜群に相性がイイです。先にもいったようにヘッドフォンは、その目的に応じて使うのが理想的で万能性を求めるものではありません。

最初にいったようにヘッドフォンを使うのはあまり好きではないのですが、これはかなりお薦めです。これを使い出してから、SynthesizerVの調声で細部の音の動きに迷うことが減って作業効率が上がりました。

とにかく声の微細な変化がとてもわかりやすいので、是非使ってみてください!


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