【調声】ベタ打ちから感情表現へ


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ベタ打ちと調整後の変化を「Natalie」を使って比べてみたいと思います。使用曲は中島みゆきさんの「時代」の冒頭部分を使います。ちなみに今、「Natalie」でのアルバム製作を行っていてこの曲も収録予定です。

ベタ打ちから感情表現へ

SynthesizerVにおいてはベタ打ちでも何ら問題ないです。ほぼ完璧に人間らしく歌ってくれます。そして仮歌レベルなら、むしろ調整せずにベタ打ちのままのほうが、その曲を歌ってもらう歌い手さんに先入観を植え付けない方が良い場合もあるでしょう。

調声にこだわる意味

同じ事はプラグインでの楽器音源で音楽を作るときにもいえます。作った曲を生ヴァイオリンや生チェロで演奏してもらいたい時に、それほど手間をかけてプラグイン音源で表現する事はないと思います。

しかし、プラグインでの製作が完成形で本気でヴァイオリンやチェロの音を作る、となるとどうでしょうか?

そうなると話は違ってきますよね。生楽器の音に限りなく近いものを作りたくなります。人によっては様々でしょうが、より細部にこだわった表現を追求していくのではないでしょうか。

SynthesizerVでの調声もまさにこれと同じです。

 調声の手順

たくさんのパラメータがある中で最初に手をつけるのはジェンダーになります。それに併せてトーンシフト。その次にテンションとブレス。そしてテンションを動かした後、ジェンダーとトーンシフトをもう一度微調整します。

  1. ジェンダーとトーンシフト
  2. テンションとブレス
  3. ジェンダーとトーンシフト(微調整)
  4. ボーカルスタイルの設定
  5. ボーカルスタイルのパラメータ設定

その後にボーカルスタイルを決めて、さらに要所要所でボーカルスタイのパラメータの設定をします。

最後にラウドネスやその他のパラメータを設定していきます。

ジェンダーは感情表現のキモ

最初にジェンダーに手をつけるのは、このブログでも何度も申し上げていますように、ジェンダーが感情表現のキモとなる部分だからです。

ジェンダーをキャラクターの雰囲気を作るために固定して使っている人も多いと思います。通常人の声は常に大人っぽくなったり、子供っぽくなったりします。なので、固定するよりも言葉のニュアンスによって動かすほうがよりリアルになります。

言葉の細部

歌のうまい人の言葉の細部まで聴いていくと常に変化しています。声が明るくなったり暗くなったり、太くなったり細くなったり。

言葉と絡めてパラメータの設定をしていくことで、生き生きと歌ってもらうことが出来ます。その部分は調声する側のセンスが問われるところでもあり、一番楽しい部分でもあります。

表現において、これが正解というものはないと思います。

なのでそれぞれのクリエイターが表現を駆使して、言葉の奥にある感情の部分を表現していくことで、より奥深い作品に仕上がると思います。

SVP File

SynthesizerV専用のファイルでSVPファイルというのがあります。SynthesizerVをお持ちの方なら誰でこのファイルを開くことで、細かい調声を再現することが出来ます。

今回もSVPファイルを用意していたのですが、残念ながらNatalie以外の歌声ではうまく再現されませんでした。今回はリリース予定の楽曲なのでNatalieを使っていますが、また別の機会で「調整解説」用に、SynthesizerV共通の「Mai」で何か作ってみたいと思います。

そのときには、SVPファイルをダウンロードできるようにしたいと思います。

作曲AIについて

少し余談ですが昨今のAI事情として、音楽製作のすべてをAIで製作できたりもします。

これはとても便利でビックリするほどの精度です。YouTubeなどでもかなり話題になっていますよね。じゃ自分は使うかといえば使いません。

プラモデルは自分で作ってこそ楽しいのです。人に作っでもらうのは何も出来ない子供です。料理にしてもそうですが、どんなにおいしい冷凍食品が出てきても、作るのが楽しい人は自分で作ります。

音楽スキルのない人や時間のない人はAIの作曲を活用すればいいと思います。僕もアルバムジャケットや動画の絵はAIに書いてもらっています。

ただプロの音楽家がAIに音楽を作ってもらって、それでお金をもらう?というのはちょっと疑問です。プライドとかそんな問題ではなく、そんな仕事はお金をもらうためだけに手を動かしているだけの仕事だからです。

もちろん、イメージを言語化してAIに指示を出すというのも技術が必要です。

もちろんこれは僕の考え方で、AIに大量に音楽を作らせて売りさばく、というのもビジネスとしてはアリかと思います。確かに効率的ですし、作品を大量に作ることは結果につながりやすいです。ただ自分以外の何かに頼らなくても、根っからの音楽家なら作品はいくらでも作れますし、作ります。

作曲家がAI主導で作曲させるということは、歌い手さんがSynthesizerV主導で歌わせるのに等しく、そこにはもう自分自身で「作る喜び」を放棄しているに等しい、と思ってしまいます。それは「歌う喜び」を放棄した歌い手と同じです。

あなたはChatGPTで書いた小説を発表する作家を、作家としてリスペクトできますか?

生活を豊かにするために「お金を稼ぐ」ということにフォーカスするのか、心を豊かにするために「音楽を作る」ということにフォーカスするのか、それはクリエイター各自のそれぞれのスタンスかもしれません。

このことは別の機会にもっと突っ込んでお話ししたいと思います。

 

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付録ー調声に最適なヘッドフォン!


付録として、エムフリお気に入りのお薦めグッズをここに掲載します!

今回は調整作業に使っている、ヘッドフォンです。


僕は基本的にヘッドフォンで音楽を聴くのは好きではなくて、アナログ録音時のモニターか雑音などの最終チェックにしか使いません。

その理由は再生音がヘッドフォンによる特性にかなり左右されるからです。なので制作時にはその目的に応じた音のヘッドフォンを選択することになります。録音時のモニターや雑音を検知するのに適したものを選びます。

ただ、ヘッドフォンはそれほど好きではないのです。空間を介さない直接耳に伝える音なので、どちらかというと好んで使うというよりも、作業工程で仕方なく使うことが多いです。

購入までの経緯

最近、SynthesizerVで調声をするようになって、MacBookPROを使用して外出先などでも作業するようになりました。そうするとヘッドフォンは必須となってきます。長時間装着して疲れなければ、まぁイイかくらいで適当に選んでいました。

当初はデザイン性からTeenage Engineering のヘッドフォンを使用していました。オシャレな感じと携帯に便利なので使っていました。ハイがカットされて中低位域がモッコリするので、ちょっとしたMix用にも使えそうなの感じでした。しかし、カバンに入れて持ち歩いていると可動部分が折れてしまいました。

気に入っていたので(デザインが〜笑)再注文して、ついでにいろいろ検索していると「アシダボックス」なるものを見つけました。ものすごく評判が良くて一時期は入手困難な状態が続いていました。日本のメーカーでデザインがなんともレトロ。

Teenage Engineeringのヘッドフォンよりも安かったのでポチってみました。

調声に最適

結論からいいますと、めっちゃイイです。特にSynthesizerVの調声作業にバッチリです!

丁度、人の声の部分が聞きやすくて微細な変化もこのヘッドフォンだと聞き逃すことがないです。SynthesizerVで調声をされている方には、是非是非お薦めのヘッドフォンです。コスパも良いです。

同じデザインで、ST-90-05ST-90-07というのがあります。僕が購入したのはST-90-07のほうです。評判になっていたのはST-90-05のほうなのですが、さらにパーツのグレードを上げて音をよくしたのががST-90-07です。

低域はあんまり出ませんので、そういった需要の音楽には不向きです。声が聴き取りやすいので、調声とは抜群に相性がイイです。先にもいったようにヘッドフォンは、その目的に応じて使うのが理想的で万能性を求めるものではありません。

最初にいったようにヘッドフォンを使うのはあまり好きではないのですが、これはかなりお薦めです。これを使い出してから、SynthesizerVの調声で細部の音の動きに迷うことが減って作業効率が上がりました。

とにかく声の微細な変化がとてもわかりやすいので、是非使ってみてください!


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